半纏を着たとび職の人
半纏デザインといえば思い出すのが、子供時代に毎日眺めていたとび職の人でした。
わたしの子供時代というのは、地方都市の中心部にまだあった江戸時代のような、長屋そのままの住居の一軒から始まります。空襲で焼けなかったため、元の長屋そのものを改築しただけの家。隣の声が直接聞こえてくるような棟割長屋。 お隣さんはとび職の人でした。出かけるときは半纏を着て、肩で風を切って歩いているような人でした。子供心にその姿のかっこよさにあこがれたものでした。 ところがなぜか、大人たちはあまりその人の話をしたがらないようで、不思議でした。
その頃の子供の遊びと言えば、コマにメンコそれになんと言ってもビー玉がメインでした。 今のように閉じこもって、テレビゲームをしているような子供などひとりもいません。 当たり前ですね。その頃はゲームボードですら高価な時代ですから。というような時代の雰囲気なので、半纏を着たとび職の人に対する感じ方も、今とは違っていたと思います。それにしても例のとび職の人に対する、大人の態度は理解できませんでした。
われわれ子供が遊んでいると、休みの日なのでしょうか、よく相手をしてもらったものです。 やはりいつもの半纏を着ています。肩で風を切って歩く、歩き方をよくまねしたものです。 無論大人からは注意されました。どうやらよくないことなのだ、ということだけは理解できました。
近所の子供だけに人気のとび職の人が、ある日突然いなくなり、後には工員をしているという、どこにでもいる平凡な青年が入居しました。それ以来あの半纏を着た人を見かけることもなくなりました。周りの大人はなぜか安心したような雰囲気です。これは後日談ですが、彼はある事件に絡んで、傷害で逮捕されたということです。大人の不思議な態度がこれで理解できましたが、忘れられない子供時代の思い出です。